【コラム2】スーパーマーケット考  

僕の実家がある北海道帯広市には、他の追随を許さない三大スーパーマーケットがある。

 F、I、Dの三社だ(イニシャルです)。それぞれ本社は帯広市で、赤と白を基調としたロゴ。えげつないキャラカブり。

 こうなれば争いが起こることは当然の流れで、各社あの手この手で個性を出している。テーマソングを作り、スポーツ大会や演歌歌手のコンサートを催し、挙句の果てにはホテル経営。スーパーなぞ催し物告知のための箱としか思えない。

そんな熾烈な争いを繰り広げている三社に順位を付けるとしたら、F、D、Iの順だろう。このランキングは、十勝にお住まいの方なら納得して頂けると思う。

なんといってもFはスーパーとしての規模も勢いも別次元。

チラシの右端にズラリと並んだ店舗一覧。「ここにもFができるのかい」という工事現場沿いでの会話。市民生活の端々からもFの繁
栄っぷりはうかがえる。そして、それだけに留まらない。

帯広駅前にはNという大きめなショッピングセンターがあるのだが、お世辞にも賑わっているとは言えない。ネオンサインも一部が電池切れで「NAGAAKIYA」になっている。盛者必衰とはこのことか。盛者のころを私は知らんが。

 そんなある日、ショッキングなニュースが飛び込んできた。Nの食料品部門が、Fになるというものだった。つまり、Nの中に「F・N店」ができるということだ。

諸行無常とはこのことか。FがNに喰らいついたのだ。

攻撃的且つ肉体派だが、食料品部門のみを自分の物にする慎重さ。そんなFの姿勢には頭が下がる。
 
これまでの話だけだと、FがトップでDとIが同率二位なのかと思うだろう。いいや違う。Dのとある出来事をきっかけに、なあなあだった二社のマウンティングがハッキリと決まってしまったのだ。

Dがテレビコマーシャルを始めたのである。ここからは筆者の妄想だが、もう少しお付き合いいただきたい。

今までDとIは、Fという雲の上の存在を共に見つめる仲間だった(『ファーストクラス』で例えると、夏木マリを見つめる沢尻エリカとシシドカフカみたいな感じです)。

どちらも地元民には馴染み深い近所のスーパーで、その日常が続くものだと思っていた(『ファーストクラス』の第一話の冒頭みたいな感じです)。

だが、突然テレビからDのテーマソングが流れ始めた(『ファーストクラス』で例えると、シシドカフカが菜々緒を使って沢尻エリカを蹴落とそうとするみたいな感じです)。

しかも、ワンパターンではない。何種類かコマーシャルがあるではないか。おはぎ美味しそう。沖縄の牛肉を猛プッシュする。地産地消とは。こんなことで、二社に対する認識が変わってしまうから恐ろしい(『ファーストクラス』で例えると、沢尻エリカが受付係に左遷されるみたいな感じです)。

そしてDが二位でIが三位になった。僕の中で。

 恐ろしいけど、順位ってこういうちょっとしたことで決まってしまうのかもしれない。きっとそうでしょう。

数年後、Iは某有名店Aに吸収合併された。武井咲……。

Iの店舗数はみるみる減少した。更地になったIの店舗跡には、看板だけがぽつんと残り、在りし日の記憶を伝えている。

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