シンプル。
サ館でマウンテンデュー飲んでるやつ、だいたい私。1年目のヒナポピです。先月の半ばに入ったばかりの新人です。これからどうぞよろしくお願いします。
今回は「今、憧れている人」をテーマにつらつらと綴らせていただきます。私が今憧れている人は、作家の堀辰雄さんです。堀さんは戦前から終戦直後にかけて、多くの名作を残した作家です。『聖家族』、『風立ちぬ』などの作品がよく知られています。
堀さんの文体は極めてシンプルです。また、作品の中で難しい言葉はほとんど出てきません。私自身、読んでいる最中に辞書を引いた記憶はほとんどありません。平易な言葉が用いられています。しかし、作品自体はポエジーに溢れており、しみじみと迫ってきます。作為もなく、衒いもなく、ただ自身のうちにある言葉を、その心の有り様を写し取る。言葉を作るのではなく、言葉をこぼしてしまう。その姿勢も、また実にシンプルです。真に言葉に実直です。こういう仕事が、堀さんの作品における非常な魅力を充実させているのかと感じます。
堀さんを含めほんとうの作り手は、何も憧れや尊敬を買うためにものを作っているわけではないことはそれとなく気づいています。よこしまな心持ちを必死に隠したところで、作品を見る人にはすぐに勘づかれてしまうでしょう。それに対し氏はどこまでも純粋な、書きたいから書いた、という動機によって作品を綴っておられたのではないか、と半ば確信しています。でなければあの文体、あの言葉には辿りつかないような気がするからです。『生きた、書いた、愛した』、というある人の墓碑銘は、こうしたほんとうの作り手の生き様をシンプルに言い当てていると言えます。
“全て偉大なものは単純なものである。”−ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
考えすぎも考えもの、ということでしょうか。悩んだときこそ、自分のいうことを聞ける人になりたいものです。堀さんのように。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
劇団しろちゃん1年目
ヒナポピ