すかいの超次元しろぶろ Vol.2「シャウトとの小話」
おはようございます。スカイです。
役者とは本当に大変なものですね。ですがこの秋公演、僕は大変さを乗り越え、全力で演劇に臨むことができたと感じています。それの支えになった周りの役者陣やスタッフワークの皆さんには、感謝を伝えきれません。ありがとうございます。
最後に、つい先日、偶然帰り道で小道具のシャウトから聞けた面白い話を、許可が取れたので皆さんに伝えて終わりたいと思います。
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5時くらいだったか。秋分も近づいて、既に辺りは暗がり始めていた。その時僕は本当に疲れていて、環状通を走る車の音が心地よかった。何も考えなくていいように、ただ無機質な情報として送られるその音が本当に心地良かったのだ。
ブーン、ブーン、ブーン、ブー…。
「…ッ!」
いきなり車の音が止んだかと思うと、世界が丸ごと停止していることに気がつく。
「…あ。」
状況を理解してすぐにわかった。
「シャウトお前。急にやめろよまじで。」
「よっす。いやーなんか居たからさぁ。」
後ろを向くとやっぱりそこにはいつもと変わらない様子でシャウトがいた。こいつのこれに巻き込まれるのは久々のことだった。
「今日いなかったよな。ほんとに用がないなら怖いからやめてよ…。」
「まあまあ、ちょっと話したくてさ。」
シャウトは環状通を見下ろすように柵に手をかけた。
この状況にして話をするということは、何か大事な話だろうか、と勘ぐるのが普通だろうが、シャウトのことだ、気まぐれの線もだいぶ拭えない。
シャウトの能力、イミテーションタイムは、独立した時空間を作り出すことができる。その間、元の世界は静止し、干渉はできないものの、実質的な時止めと瞬間移動が可能だ。その時空間には本人はもちろん、一度触れれば、近くにあるものも連れることができる。
ほんと、優れたものだ。
「公演はどうー?自分の演技とかさ。」
「ああ、まあ、ぼちぼちよ。楽しいけど、疲れるし。」
シャウトは変わらず、ずっと遠い目をしていた。
「星いくつ?」
「ん?」
「今の自分の演技、星つけるならいくつ?」
「え、3くらい?かな。」
「ふ~ん。俺はうまいと思うけどね、星5つは絶対あるよー。」
「て満点いくつだよ。5点満点か10点満点かで結構変わるぞ。」
その時シャウトは、頬は緩んでながら悲しそうな、不思議な表情をしていた。
そして微妙な間を置いて、口を開いた。
「ううん。8個。」
「え?」
「星8個……知らないよねぇ。」
「マイナーな評価法やめてね。」
「いやー、皆知ってるよ、っていうか知ってた。」
気まぐれモードでは無い可能性に緊張が走った。
「…どういうこと。」
「星2つまではBAD、つまり悪い。星3つからが悪くないって評価になる。そんで星8個でパーフェクト。この8段階評価は世界の主流だったんだよ。ある程度目安があるから、個々人の主観での絶対的な相対評価ができてた。まあ個人的には好きじゃなかったけど、8個ってキリ悪いし。けど、とても優れた評価法だったと思うよ。基準が個人に寄りすぎないから、サンプルが少なくても、星の数だけで十分その良し悪しが把握できてた。だから、誰もが使っていた。
でも1年前、世界から8段階評価が消えたんだ。データとか痕跡も何もかもが消え去った。もちろん、みんなの記憶からも。そして5段階評価に置き換わった。きれいに整合性を保ったままね…。あ、これ内密ね?」
突飛押しもない話には飽き飽きだったが、これはあまりにも、すぎていた。
「…信じてるー?」
信じたくはなかったが、話を聞いて、なぜか記憶をくすぐられるように感じた僕には、シャウトが嘘をついているとは思えなかった。
「まあ、一旦ね。けど1つ疑問。なんでシャウトだけは憶えてるわけ?」
「僕も最初はおかしな夢かと思ったよ、気づいたら異変が起きてたわけだからね。それで先輩方に相談してみたら、僕の能力が関係してるかもって。」
「まあ、普通に考えたらそうだろうけど。」
「たてた仮説はこう。今回起こった、もしくは意図的に行われた大規模な現実改変には、移行時間が数秒から数分あった。けど偶然その間にイミテーションタイムに入ったことで、僕だけ慣らしが中断ないしリセットされたのではないかっていうね。」
「違う時空間に身体を置いているわけだから慣らしに影響が出たと、辻褄はあう…。」
大切な人が消えたわけでも、人類にとって不可欠な概念が消えたわけでもない。けど、自分以外、誰も元の世界を知らないというのは、どれほどの不安なのだろう。
「この件では僕がたまたま影響を受けなかっただけで、これまでに何度も起きていたとしてもおかしくはない。そしてこれからも。だからできるだけ能力を使う頻度を増やして手がかりをつかもうとしてるんだよねぇ。」
シャウトはまた遠い目をしていたが、さっきまでのそれとはまた違って見えた。
「…なんで今これを話したの?」
「ふふ、それがね、とあるゲームに8段階評価が残っていたんだよ。」
「それは…かなりの手がかりになりそうだけど、なんてゲーム?」
「ゲームの名前はバーガーバーガー。ハンバーガーチェーンを経営するゲームで、ゲーム内でのハンバーガーの評価法がなんと8段階評価。なぜバーガーバーガーだけが僕と同じく改変を免れているのかはまだ分からないけど、まあそんなことどうでもよくて、ほんっと嬉しかったよね。見つけたときは。」
どうでも良くはないだろうが、自分だけが取り残されていたと思っていた世界に一筋差したんだ。相当に嬉しかっただろう。
「三万くらいかけて買っちゃった。バーガーバーガーとバーガーバーガー2。なんかプレミア価格ついてて高くてさー。プレステ持ってないから遊べないけど。」
「プレステも買えよ。」
「あ、たしかに。」
その後もひとしきり談笑をした。そして三十分くらい経ったころ、シャウトは能力を解いた。
「…帰るか。」
「うん。オチもなんもない話に付き合ってくれてありがとう。ただ本当に伝えたくてさ。この今の、自分の状況を。それと、さっきも言ったけど、内密にお願いね〜。」
「もちろん。それじゃ…」
その時だった。僕たちのもとに、まったくの予想外の客がやってきた。
「あれ!2人とも何してんの…って、あ。(ヤベ(汗))」
「「あ。」」
僕とシャウトが即座にこう反応したのも、無理はない。
「ごめん!分かってるとは思うけどわざとじゃなくてー。(あは、おもろシャウトの状況(笑)。話してくれてもよかったのにー)」
シャウトがこんな難しい顔をしたのは、このときが最初で最後だろう。
「ハるかさぁ。ちゃんと秘密にできる?」
「へへ、さすがに。(ま、たぶん平気だろ!(笑))」
「「はぁ…」」
ハるかは他人の感情と思考、それからその思考に関連する記憶まで読み取ることができる。なぜか本人の思考が他人に聞こえてしまうという欠点もあるが、本人はさほど気にしていない。
「ハるかさん、頼みます。」
「だからわかったって!(一旦噛みしめるか)」
ハるかを前にして、秘密などまったくの無意味だ。
「まあもういいや。とりあえず僕は巡回続けるから。スカイもハるかもまたね〜。」
シャウトはそう言うと姿を消した。
「…じゃあ、僕たちは帰るか。」
「え、あー私ちょっと急ぎめだから先行くわ。ごめん!じゃ!(2人はちょっとね〜(汗))」
ハるかは自転車で駆けていった。
北海道。9月なのにもう肌寒くてたまらんすわ。
1年目_役者 スカッシュいなり

