トレンディドラマ『演出の日常』第1話
家庭教師のバイトから帰って来た私は、布団も敷かず、直ぐさま炬燵に入り眠りこんでしまった。つい先日、所属している某学生劇団の通し稽古が行われ、その芝居の演出を務めている私は疲労が限界に達していたのだ。しかし私はすぐに目を覚まさねばならなかった。インターホンが鳴ったのだ。どうせ宗教の勧誘か何かだろう。貴重な睡眠を邪魔され、苛立ちがふつふつと湧いてくる。ドア越しの喜ばれざる客に冷たい一瞥をくれてやろう。私の下宿には宗教の勧誘が週二ペースで訪れる。しかも毎度異なる宗教団体である。それにつけ、無宗教国家と揶揄される我が国であるが、実際のところは多宗教国家であると主張したい心地になる。しかし、それにしても多すぎる。おそらく私はこの国に存在する全ての宗教団体から勧誘されているに違いない。モテる男はつらいぜ。などという下らない考えを巡らせながら、ドアの覗き穴を覗く。
あれ、誰もいない。
ドアを開ける。
やっぱり誰もいない。
今時ピンポンダッシュかよ。もうどうでもいいから炬燵に戻ってもう一眠りしよう。ドアを閉める。
閉まらない。
あれ、
あれれ、
あれ?
あれれ?
達磨や!!!!
予期せぬ来訪者に、汚い髭面のバナナマン日村似の男は絶句した。
青年、君は金曜たまゆら倶楽部の会員候補として選出された。私について来い。
ドラえもんたいな声で、そう、達磨は言った。水田わさびではなく、大山のぶ代みたいな声で。
to be continued…